「アブラハム合意」とは何だったのか? イラン紛争が揺るがす中東のパワーバランス
流動化する中東情勢のなかで、「アブラハム合意」を改めて捉え直す必要がある。2020年に始まったイスラエルと湾岸諸国の関係正常化は、地域の安定化を掲げつつも、実際にはイランを意識した安全保障協力の側面を持っていた。これに対しイランは湾岸諸国との関係改善で対抗し、さらにガザ戦争やその後のイランをめぐる紛争は、この構図に揺さぶりをかけている。中東秩序はいまも再編の途上にある。
曽我太一
2026.05.03
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アブラハム合意とは
第1次トランプ政権の仲介のもと、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が2020年8月、国交正常化で合意。これを皮切りに、同年9月には湾岸のバーレーン、同年12月にはモロッコがイスラエルと国交正常化することで合意した。
なお、イスラエルとモロッコは過去に一定程度の外交関係を持っていたこともあるが、断絶していたために、正確には「再正常化」だったとも言える。
なお、2020年10月にはスーダンとイスラエルも国交正常化で合意したが、その後スーダンが混乱に陥り、政情が不安定となったため、「合意」以降に具体的な進展、例えば大使館設置などの進展は報告されていないため、アブラハム合意の主要プレーヤーではないので、ここでは議論の対象とはしない。
合意の狙いは「イラン包囲網」
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- 「くさび」を打ち込もうとしたイラン
- パレスチナ問題の文脈でのアブラハム合意
- サウジとの関係正常化とハマス
- アブラハム合意の行方
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